建築構造家・山脇克彦氏が携わった大小様々な建築の構造模型の中に、最小スケールの展示物として指輪が置かれる。 その指輪のデザインプロセスを見せるための展示台の提案である。
構造模型が1/〇〇といった縮尺を持った展示であるのに対して、指輪の展示は実寸、もしくは拡大された検討スケッチのように、1/1以上のスケールを持っている。
そのため、鑑賞者はスケールが縮小された構造模型からスケールが拡大された指輪の展示へと思考を切り替えつつ、サイズが大きな構造模型からサイズが小さな指輪へと意識を集中させる必要がある。
円形に立ち上がった展示台の縁は周囲と展示空間の切り替わりを示唆し、高さの変化する展示面はそれぞれに情報の切り替わりを整理している。
また、指輪と呼応する円形の展示面が内側に傾斜しながらラウンドすることで、鑑賞者の視線が展示物にフォーカスされつつ、情報を順々に追いながら展示台をぐるっと回る体験を生んでいる。
異なる情報のひとつながりの展示として、分節と連続をいかに生むか。
展示台を展示空間として捉え、展示空間の中にもう一つの展示空間を建築的操作によって創出する試みである。